意義と用途
5.1 この試験法は、空気中のフィルム絶縁円形マグネットワイヤの熱耐久性特性および熱指数を決定するのに有用である(1.3参照)。この試験法は、より複雑なシステムのテストまたは機能評価を行う前のスクリーニングテストとして使用される。また、完全な機能システムテストが実行不可能な場合にも使用される。
5.2 経験によれば、フィルム絶縁電線と電気絶縁ワニス又は樹脂は、熱ばく露プロセス中に互いに影響を及ぼす可能性がある。試験法D3251は、絶縁ワニス又は樹脂とフィルム絶縁電線の組合せの耐熱性に関する指示を提供する。ワニス又は樹脂とフィルム絶縁電線の組合せの相対熱寿命は、ワニスなしで試験されたフィルム絶縁電線の寿命と比較して、ワニス又は樹脂とフィルム絶縁電線の組合せの相互作用によって増加又は減少する可能性がある。
5.3 導体の種類又は導体の表面状態は、皮膜絶縁マグネットワイヤの耐熱性に影響を及ぼす。この試験法は、様々な種類の導体の皮膜絶縁の耐熱性特性を決定するために使用される。7.1.1に規定されたサイズ以外のサイズの使用は許容されるが、耐熱性特性を決定するためには推奨されない。
5.4 この試験法によって決定される温度指数は、20 000 hでの摂氏温度で表される公称値または相対値である。これは比較のためにのみ使用されるものであり、フィルム絶縁ワイヤが動作することができる温度を表すことを意図したものではない。
5.5 この試験法で得られた結果に影響を及ぼす多くの要因がある。より明らかなものの中には、次のものがある:
5.5.1 ワイヤサイズおよびフィルムの厚さ。
5.5.2 保証電圧テスト中の湿度条件。
5.5.3 オーブン構造:
5.5.3.1 空気の速度
5.5.3.2 交換用空気量
5.5.3.3 熱曝露中の分解生成物の除去。
5.5.3.4 オーブンローディング
5.5.3.5 オーブンが温度を維持する精度
5.5.4 ほとんどの実験室では、熱耐久性オーブンの数は限られており、したがって、多くの異なる組の試料が同じオーブン内で熱にさらされる。すべての試料は、オーブンが開かれるたびに必ずしも除去されるわけではない。この余分な温度サイクルは、劣化の影響を及ぼす可能性がある。
5.5.5 特に絶縁が脆くなる後のサイクル中に、供試体を取り扱う際の注意。
5.5.6 試験片の振動は、その後の熱耐久サイクル中に劣化作用を及ぼす。
5.5.7 誘電試験装置の電気的特性8.4及び8.5を参照すること。
5.5.8 湿度、化学的汚染、機械的応力又は振動などの環境要因は、フィルム絶縁電線が熱劣化によって弱化した後に故障を引き起こす可能性のある要因であり、絶縁システム試験においてより適切に評価される。
適用範囲
1.1 この試験法は、大気圧の空気中におけるフィルム絶縁された円形マグネットワイヤの耐熱性の決定を対象とする。これは、綿又はガラスのような繊維絶縁を有するマグネットワイヤには適用されない。
1.2 この試験法は、交流耐電圧試験に応じた変化を観察することによる耐熱性の評価を対象とする。マグネットワイヤ絶縁の他の特性の変化を観察することによる耐熱性の評価には、異なる試験法を使用する必要がある。
1.3 いくつかのタイプのフィルム絶縁電線を空気のない気体または液体環境で熱に曝露すると、空気中で得られるものとは異なる熱耐久性値が得られる可能性がある。電線が使用中に空気に曝露されない用途に関して空気中で加熱することによって得られる結果を解釈する際には、この可能性を考慮する。
1.4 放電開始電圧を超えるか又はそれに近いレベルで長期間印加される電気応力は、フィルム絶縁電線の耐熱性を著しく変化させる可能性がある。そのような電気応力条件の下では、材料間の比較もまた、この方法を用いて開発されたものと異なる可能性がある。
1.5 この試験法はIEC 60172に類似している。標本の準備に関しては違いがある。
1.6 インチ-ポンド単位で記載された値は、標準とみなされる。括弧内のSI単位は、情報としてのみ提供され、標準とはみなされない。
1.7 この規格は、その使用に関連するすべての安全上の懸念(ある場合)に対処することを意図するものではない。適切な安全、健康及び環境の慣行を確立し、使用前に規制上の制限の適用を決定することは、この規格の使用者の責任である。
1.8 この国際規格は、世界貿易機関の貿易の技術的障害(TBT)委員会が発行した国際規格、指針及び勧告の策定のための原則に関する決定において確立された、標準化に関する国際的に認められた原則に従って策定された。